闇金ウシジマくん漫画

ウシジマくん「フリーターくん(ニート)」編のネタバレと感想

金融界にも顔が利くウシジマくん(以下:丑嶋)。今回は丑嶋が株の影響力を悪用して一人の主婦を追い込んでいく様子と、その主婦の息子でフリーターの男が真人間になっていく過程が同時に展開される「フリーターくん」編のネタバレと感想をご紹介します。

主人公は関係が良好とは言えない宇津井親子です。息子の宇津井優一(以下:優一)は、35歳になっても定職につかず実家に寄生するフリーター。派遣で働いたお金をパチスロにつぎ込み、消費者金融から借金までしている債権者です。

もう一人の主人公である宇津井美津子(以下:美津子)は、そんな息子を見て「自分が家を守らなければいけない」と考えています。老後の資金や家のローンの支払額を株の取引で手にしようと売買を行っていますが、上手くいっていない様子です。

物語は美津子が株の運営資金を借りるために、丑嶋が経営する闇金融「カウカウファイナンス」へ訪れるところから始まります。

フリーターくんのネタバレ


主人公のひとり、優一は35歳にもなって定職にも就かず、実家に寄生するフリーター。パチンコやパチスロで1日を鬱々と過ごし、消費者金融から借金をしている債権者でもあります。

そんな生活に不安を抱え何とかしなくてはという気持ちがある反面、社会や親からの待遇に不満を持っており、嫌なことがあったらすぐに頭に血が上る短絡的思考の持ち主でもある優一。自身が開設したブログ『鬱ブログ』に、その時感じたことを書き込み、日々現実逃避しています。

もう一人の主人公である美津子は、株の取引で老後の資金や家のローン代を捻出しようと考えている一主婦です。息子はフリーターで、主人は早期退職し職に就いていないため、「自分が家を護らなくては」という信念に駆られています。

しかし、自身が手を出した新興株が大暴落して追証が発生。証券会社に120万円入金しなければ400万円を失ってしまう事態に陥ってしまい、そのお金の一部をカウカウファイナンスで借金することにします。

しかし、丑嶋のところでお金を借りたのが運のツキ。丑嶋はいつも通りトゴ(10日5割)の暴利で美津子にお金を貸し付け、更に宇津井家から資産を奪い取れるだけ奪い取ろうと画策を始めます。

資産を奪われ、持ち家までとられてしまう宇津井家

丑嶋からの借金で、一時的に事なきを得た美津子でしたが、信用取引にまた追証が入ってしまいます。丑嶋にそのことを相談すると、「もし他に株があれば担保にして融資できる。」と話を持ちかけられます。

その話を聞いた美津子は、自身の親の家から留守を見計らって証券を盗み、それを担保に入れてお金を借ります。

そこで丑嶋は、株式投資に関する詐欺師で、仕事仲間でもある樺谷を、「株の専門家」として美津子に紹介。さらに樺谷が読んだ木都根という大勝証券の社員もそこに合流し、偽の取引を行って美津子に新しい会社の株を購入させます。

その会社は数日後に経営者のスキャンダルで暴落することが分かっており、多額の架空追証を発生させられるように丑嶋たちが用意したもの。丑嶋は宇津井家の財産を差し押さえるために支払催促をかけます。

しばらくして丑嶋たちが美津子に買わせた会社の株は暴落。会社は倒産し、株券は紙クズ同然となり、追証が3,000万円発生しました。

持ち家や親の家まで失い、銀行の預金まで差し押さえられた宇津井家。美津子は弁護士に相談するも、債務名義がすでに確定しており手遅れの状態でした。「1か月前に裁判所から支払催促が送達されていたのに、なぜ異議申し立てしなかったのか。」と弁護士に尋ねられます。

帰宅し郵便受けを確認する美津子。しかし支払催促は見つかりません。

実はその支払催促は、優一が受け取っていました。受け取ったまま部屋に放置していたため、債務名義が確定してしまったのです。

優一が独立し、家を出る

公営住宅の2間しかない部屋で暮らすことになった宇津井家。美津子が優一に生活費3万を要求してきたことがきっかけで、優一が激高。美津子にグラスを投げつけ、怪我を負わせたことが原因で家に居づらくなり、家出をします。

仕事を求めて実家のあった地方から上京。ネットカフェや路上を転々としながら日雇いの仕事で食いつなぎます。ホームレスにもなれないと嘆く優一は、漠然と不安を抱えながら、とあるゲストハウスに入居し、ゲストハウスの管理人である幸と出会います。

幸の存在は優一に生きる希望を与えました。少しずつ生活のリズムが生まれ、徐々にお金も貯まっていき、自己破産費用の25万円を稼ぐという目標もできました。1日を精いっぱい生きると意気込む優一。しかし、日雇いの仕事中に腰を痛めてしまいます。

医者から椎間板ヘルニアと診断された優一。力仕事ができなくなってしまった優一はハローワークでデスクワークを探すも見つけることができず、とうとうゲストハウスの宿泊費も払えなくなってしまいます。

同時期に、優一の生きる糧となっていた幸がゲストハウスのオーナーと不倫をしていたことが発覚。金銭的にも精神的にもゲストハウスに居られなくなった優一はゲストハウスを出ていくことを決意します。

ゲストハウスを出た優一は、自分が持っているお金すべてを使い、少しでも人が少ない場所へ行こうと決意。しかし、このままではどこへ行っても同じで、居心地の悪い場所へ落ちていくことに気づきます。

問題に向き合うことが大事。まずは親と向き合って話をしよう。そう考え、公衆電話から実家に電話した優一。優一の耳に届いたのは母親の美津子が入院したという知らせでした。

改心し、真人間になっていく優一

腰は椎間板ヘルニア。食料も水もなく交通費すらも持っていない優一。しかし、美津子が入院しているという病院に向かって歩き始め、40㎞も離れた病院に辿り着きます。

美津子は過労で倒れただけで命に別条はありませんでしたが、やつれた美津子の姿を見て改心。実家とも和解し、自己破産の手続きもできるようになりました。

時を同じくして、優一は美津子が丑嶋から50万円の借金をしていることを知ります。

株の一件以降も美津子と丑嶋の関係は続いていました。美津子が持ち家を手放すことになった際に、丑嶋は美津子がスムーズに公営住宅に入居できるように工面。以降、美津子は丑嶋を信頼し、闇金と知りながらも丑嶋へ借金を返済し続けていたのです。

その話を聞き、丑嶋の甘い嘘に騙されてお金を搾り取られているだけだと感じた優一は、美津子の借金を肩代わりすることを決意。「俺を頼れ!あんな男を信用するな!」と美津子を諭します。

その態度を気に入った丑嶋は、50万円にトゴの利子が上乗せされた金額ではなく、1年間毎月5万ずつ返済できたら完済扱いにするという温情に出ました。

再出発を果たす宇津井家

優一は、介護の仕事に就き、夜はパン工場でバイトをするという生活を開始。丑嶋の借金も遅れることなく真面目に返済し、職場ではお年寄りから慕われるようになります。「キツイ生活だが終わりが見えている分楽だ。」と前向きにもなりました。

仲違いとなっていた美津子との関係も良好。寝食を共にし、夕飯の献立をメールで相談し合える仲になりました。

鬱ブログも「自己破産後、親と同居しながら訪問介護と工場の夜勤で再スタートをした35歳未婚者のつぶやき」というものに変更されており、短絡的な性格も改善された優一。

そんな優一の様子や今の宇津井家を見たカウカウファイナンスの社員たちは、「今の宇津井家の方が幸せそうだ。」と感じるのでした。

「フリーターくん」を読んだ感想


一見、ハッピーエンドのように見える「フリーターくん」ですが、宇津井家は全財産を丑嶋に奪われ、持ち家までとられた上で自己破産しています。物語の本質を辿れば「闇金って怖い」と感じさせられる内容ではないでしょうか。

この物語で考えさせられるのは、株に手を出すことの怖さと、人間はいつからでもやり直せるということの2つです。

株に手を出すことの怖さ

インターネットで「株 儲かる」などと検索すると、「1年で資金が2~3倍になる」「1年で20万円が1,000万円になる投資法」などと、あたかも株は必ず儲かるかのような甘い文言が羅列されています。

しかし、実際は銘柄を賢く選択しないと損するケースがほとんどで、銘柄をうまく選択できたとしても、株だけで生活できるのは1割未満。常に勉強が必要で、年利10%稼げれば御の字という厳しい世界なのです。

また、株の世界は情報弱者が情報強者の食い物にされる世界でもあります。

そんな厳しい世界にふらふらっと足を突っ込んだ美津子。図ったかのように丑嶋の食い物にされます。

結果として3,000万円以上の損失を出し、家のローンを返済するどころか、家そのものを奪われてしまいます。

情報弱者を利用して利益を得ようとする人が存在する昨今。株に手を出す際には株や企業に関する知識と覚悟を持ち合わせていないといけません。

「フリーターくん」では、考えなしに株に手を出した人間が迎えた末路を大々的に描くことで、そのことを読者に伝えたかったのではないでしょうか。

人間はいつからでもやり直せる

主人公のひとり、優一は35歳にかかわらず定職につかず、実家に寄生して借金までしているフリーター。丑嶋の言葉を借りるなら、典型的な「クズ」でした。

しかし、歪な形ながらも家を出て初めて独り立ちしたことや、幸という女性に恋をしたこと、腰を痛めて働けなくなったこと。さまざまな経験が優一の心の部分に変化をもたらしていきます。

そして、優一が改心するきっかけになったのが母親である美津子の入院でした。

40㎞離れた、母の入院している病院まで歩いて向かうなど、今まででは考えられなかった行動に出る優一。やつれた美津子の姿を見て改心し、美津子が丑嶋からしていた借金まで肩代わり。口先だけでなく、実際に借金を返し続けます。

母親の入院という出来事で真面目に働くようになった優一。ポジティブなきっかけではなかったですが、優一は変わることができました。人は何かのきっかけで変わることができますし、いつからでもやり直せるのです。

この記事のまとめ
  • 主人公はフリーターの優一と、その母である美津子の2人
  • 優一は定職にも就かず、パチスロで1日を費やす債権者
  • 美津子は株の運営資金を調達するため、丑嶋から借金をする
  • 美津子は丑嶋とその仲間にハメられ、持ち家を含む全財産を失う
  • 優一は母親の入院をきっかけに改心。真面目に働くようになる
  • 「フリーターくん」編では株の怖さと人間の心境の変化を学ぶことができる

いかがでしょうか?
以上が「フリーターくん」編のネタバレと感想です。

「フリーターくん」編は7巻~9巻に渡って掲載されています。ウシジマくんを読んだことがないという方は、ぜひ一度ウシジマくんを読んでみてください。

もう読んだという方も、再度読み返してみることで新たな発見があるかも知れませんよ。